パチンコホール全国40業者、1000億円超申告漏れ

全国各地でパチンコ店を運営する約40グループが東京国税局などの一斉税務調査を受け、少なくとも総額約1000億円の申告漏れを指摘されたことが13日までに、関係者への取材で分かった。
(日本経済新聞夕刊2012年2月13日15面)

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「各グループは会社分割などを利用し、不動産の含み損を損金計上していたが、国税当局は一連の税務処理を租税回避行為にあたると判断したとみられる」(前掲紙)

スキームの詳細は不明ですが、報道を見る限り、組織再編税制を悪用し損失を二重、三重に利用するストラクチャーや意図的な非適格組織再編成により損失を発生させるストラクチャーを使ったものと思われます。

これらのストラクチャーについて具体的に書き記すことは差し控えますが、実務書等(例えば佐藤信祐著「組織再編における包括的租税回避防止規定の実務」中央経済社)では以前からその濫用の危険性について指摘されているところです。

本件では一部のストラクチャーについて国税は包括的租税回避防止規定(法人税法132の2)を適用したものと思われます。しかし包括的否認規定では、どのような取引が濫用的として想定されているかわからず、課税関係における予測可能性が確保できないという大きな問題点があります。この点渡辺徹也教授が次のように指摘しており、きわめて真っ当な意見と思われます。

「もっとも、今回の改正では、時間的な制約から、想定される濫用的取引を数え上げ、それを網羅する形で個々の防止規定を作る余裕がなかったため、現実的対応として、組織再編税制を悪用する納税者を威嚇する意味で、包括的否認規定を置かざるを得なかったのかもしれない。もし、そうなのであれば、運用上、包括的否認に基づく否認権をいたずらに行使すべきではなく、将来的には、本法だけでなく、施行令や施行規則においてより具体的な個別的否認規定が作られ、その過程を通じて、組織再編税制が整備されていくことが望まれる」(渡辺徹也著「企業取引と租税回避」中央経済社)

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