退職給付引当金、積立不足一括計上へ 2014年3月期から

年金の積み立て不足を貸借対照表に全額反映させる上場企業の新しい会計基準が、2014年3月期の連結決算から適用される見通しとなった。多額の積み立て不足を抱える企業の中には自己資本比率が低下するところもある。新基準を機に、運用や給付の見直しなど年金財政の健全化に動く企業も出てきそうだ。
(日本経済新聞2012年5月9日1面)

【CFOならこう読む】

「企業会計基準委員会(ASBJ)が10日にも議決する。早ければ今月中にも会計基準として成立する。現在の会計基準では年金の積み立て不足は10年程度の期間で毎年分割して費用に計上し、総額は決算書外の注記による開示にとどめている。新基準では従来と同様の毎年の費用処理に加え積み立て不足を全額負債に即時に計上、一方で自己資本を減額し、貸借対照表に反映させる。」(前掲紙)

新会計基準は、連結財務諸表のみが適用対象になるようです。
本件については、当ブログでも何度か取り上げています。

2011年8月24日「年金会計の新基準、強制適用時期1年先送り」

2010年3月12日「退職給付引当金、積み立て不足一括計上へ」

もともと2012年3月期から強制適用するという方向性であったのが、2年先延ばしになったということです。

なお今日の新聞の13面には、資本への影響という意味で繰延税金資産についても言及されていますが、当然のことながら退職給付引当金に係る将来減算一時差異について計上される繰延税金資産であっても回収可能性の判断を会社区分に従って行なわなければなりません。

監査委員会報告「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」の5.(1)は、過去の業績等に基づいて会社を以下の5つに区分し、各区分の会社における回収可能性の判断指針を提供しています。

ただし退職給付引当金の将来減算一時差異のように、その解消年度が長期となる場合には次のように取り扱うこととされており、留意が必要です。
(監査委員会報告「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」5.(2))

(1)区分の会社及び

(2)区分の会社の場合には、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、その回収可能性があると判断できるものとする。

(3)及び(4)ただし書きの会社の場合には、通常、合理的な見積り期間可能期間とされる期間(おおむね5年)を超えた年度であっても、当期末における当該一時差異の最終解消年度までに解消されると見込まれる将来減算一時差異に係る繰延税金資産については、その回収可能性があると判断できるものとする。

(4)(ただし書きの場合を除く)の会社の場合には、翌期における解消額について、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産については、その回収可能性があると判断できるものとする。

(5)の会社の場合には、原則として、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、その回収可能性はないものと判断する。また、債務超過の状況にある会社や資本の欠損の状況が長期にわたっている会社で、かつ、短期間に当該状況の解消が見込まれない場合にも、これと同様に取り扱うものとする。

【リンク】

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