営業(経営)レバレッジ係数とは

歩みがついに止まった。日本マクドナルドホールディングスの2012年の既存店売上高が、9年ぶりにマイナスとなった。原田泳幸会長兼社長は消費の異変を感じ、昨秋から戦略の大幅な見直しに動き出した。「2013年に基盤を固め、2014年に大きく成長する」という。2004年の社長就任以来、デフレ下の勝ち組企業をけん引してきた原田氏。カリスマの反撃はなるか。
(日経ヴェリタス2013年2月3日16ページ 会社がわかる)

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インタビューに答えて、原田社長は利益率について次のように答えています。

−原田社長の就任前に1%に満たなかった売上高経常利益率が、2011年12月期には9%と外食平均の5%を大きく上回りました。これ以上の利益率の改善は可能でしょうか。

「日本の外食の平均数値には関心がない。世界のマクドナルドのトップ10の平均値を見ている。トップ10では売上高は米国に次ぐ2位だが、粗利益から始まって営業利益、経常利益はまだ下の方にいる。少なくとも真ん中にはいないといけない。利益率を上げる一つの手段がフランチャイズチェーン(FC)比率の引き上げだ。直営店が多いと固定費が高くなり、売上のちょっとした下振れでも利益の振れ幅が大きくなる。現在約65%のFC比率を今期中に70%に上げる」」(前掲紙)

「固定費が高くなり、売上のちょっとした下振れでも利益の振れ幅が大きくなる」とは営業(経営)レバレッジで説明できます。

営業(経営)レバレッジとは、販売量の変化に対する営業利益の感応度を言い、営業利益の増減率/販売量の増減率で計算されます。

販売量が所与のとき、営業(経営)レバレッジ係数は、

貢献利益(=売上高-変動費)/営業利益

により計算されます。

導出は次の通りです。

販売量:x 販売量の増減:△x 販売単価:p 単位当たり変動費:v 固定費:Fのとき、

営業利益率の増減率
=((x+△x)(p-v)-F)-(x(p-v)-F)/(x(p-v)-F)
=△x(p-v)/(x(p-v)-F)

販売量の増減率
=△x/x

営業(経営)レバレッジ係数は、

営業利益の増減率/販売量の増減率
=△x(p-v)/(x(p-v)-F)/△x/x
= x(p-v)/(x(p-v)-F)
=貢献利益/営業利益

営業(経営)レバレッジとは、販売量の変化に対する営業利益の感応度を表しますから、例えば営業(経営)レバレッジが2.5のときは販売量(単価が一定の場合には売上高)の増減に対し、営業利益はその増減額に対し2.5倍営業利益が増減します。

原田氏は、FC比率を低いと相対的に変動費に比し固定費が大きく、営業(経営)レバレッジが大きくなるので、「売上のちょっとした下振れでも利益の振れ幅が大きくなる」ことになるのです。

なお、営業レバレッジが高いということは、リスクが高いということです。これがCAPMのβに影響を及ぼすとされています。

「過去の実証データによれば、営業レバレッジの高い会社については、実際にベータも高いものになっている。」(リチャード・ブリーリー スチュワート・マイヤーズ 「コーポレートファイナンス」(第8版) 日経BP社270ページ)

財務レバレッジが高い会社のベータが高くなる傾向があるのはよく知られているところですが、営業(経営)レバレッジ係数が高い会社のベータも高くなる傾向があるのです。

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