保有の金融商品の開示で論点整理

企業会計基準委員会は4日、金融機関などが保有する金融商品を3段階に分類することを盛り込んだ論点整理をまとめた。金融機関がリスクの高い金融商品をどれぐらい保有しているかを投資家が把握しやすくする。10月5日まで関係者からコメントを募集し、来年にも公開草案をまとめる。早ければ2011年3月期導入を目指す。
(日本経済新聞2009年8月5日5面)

【CFOならこう読む】

「市場価格の把握しやすさに応じて金融商品を「レベル1」から「レベル3」に分類し、残高や内訳の開示を義務付ける。金融危機で流動性が低下した証券化商品や仕組み債などは「レベル3」に入り、金融機関などが独自に算出した価格を公表する。」
(前掲紙)

企業会計基準委員会(ASBJ)のウェブサイト上に、論点整理がまだアップされていないので詳細はわかりませんが、基本的には国際会計基準と大きな差異はないものと思われます。

若干論点が異なりますが、8月3日の週刊経営財務の中で、斉藤静樹氏がコンバージェンスの重要性を次のように語っています。

「もうひとつ、そこに指摘されているのは、シングルセットの高品質な基準が望ましいと言われ続けているにもかかわらず、果たして本当に単一の基準に統合することが望ましい結果を生むのかということになると、それをサポートする経験的な証拠は存在しないことも指摘されています。つまり、誰にも事前にわからないことを誰かが決めてしまうのは、そうとう乱暴な話だということです。

アメリカ会計学会のコメントは、米欧がアメリカ基準と国際基準を相互に受け入れれば、両方の市場で2つの基準が自由に選択され、その選択の結果が市場に伝われば、投資家がそれぞれの基準の品質を評価する。そのプロセスを通じて、自ずから最適なコンバージェンスのレベルが決まるし、それが最適なコンバージェンスの経路を保証するという考え方が基調になっています。一般の人々にとっても常識的な話でしょう。

そういう議論が出てきているとすると、アメリカがいきなりアドプションに飛躍するのは簡単ではないかもしれません。となると市場に2つ以上の基準が併存することになりますが、それらが大きく違っていたのでは困りますから、投資家の判断に支障のない程度まで基準を近づけていかなければいけない。そういうプロセスが続くはずですから、その場合にはコンバージェンスが非常に重要な役割を持つでしょう。」

そうすると日本が日本基準のどこにこだわるかについてもっと議論する必要があります。

西川ASBJ委員長は、先日国際会計基準審議会(IASB)が公表した有価証券時価評価ルールの改定案のうち、株式について例外的に損益表示についてOCI(その他の包括利益)を選択できる点について反対の意向を表明しているようですが、これを日本基準としてどうすべきか、今後議論を深めていく必要があります。

「OCIが今使っているリサイクルするものではないとされるために、売却しても売却益が出ない、減損も出ない。持っていても売却するまで何ひとつP/Lに出てこないわけです。配当についてもOCIだといわれています。これがIASBの最新の提案です。」
(8月3日 週刊経営財務)

リサイクルというのは、売却時点でPL上損益認識することを言いますが、国際基準の提案はそれとは全く異なるわけです。

政策投資が行われる場合、政策投資のメリットは営業利益に反映されるのに対し、株式の保有コストが純利益に全く反映されないのは問題があると考えられるのです。

持ち合い株式がいまだに多く行われている日本において、どのような会計基準を是とするか、多角的に検討する必要があることは間違いありません。

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