信託型日本版ESOP

三菱UFJ信託銀行など大手信託銀行が信託の仕組みを使った新しいタイプの従業員持株会導入の支援をはじめる。支援するのは米国で普及している従業員持株制度(ESOP)の日本版で、信託を使うことで持株会は従来より株式を安定的に取得しやすくなる。金融庁による制度整備の後押しもあり、大手信託が本格参入することで企業の導入が加速しそうだ。
(日本経済新聞2009年8月6日4面)

【CFOならこう読む】

制度の仕組みは次の通りです。

「企業はまず、持株会と切り離して信託を設定する。
たとえば、5年の信託で銀行から10億円借り入れるとする。信託は10億円で、持株会が5年間で取得する予定の株数を一括で取得する。株価が1000円だとすると100万株を信託が保有することになる。

持株会は毎月の拠出金に応じて、その時点の時価で換算した株数を信託から取得する。1000万円の拠出金があるとすると、株価が1000円のままなら1万株、2000円に上がっていれば5000株、500円に下がっていれば2万株を信託から取得する。

株価が値上がりすれば、5年後の信託終了時に利益を株式として従業員に分配する。値下がりすると設定時の借入が一部返済されずに残り、企業が負担することになる。」
(前掲紙)

米国のESOPは、従業員をオーナー化させるインセンティブプランである、というところに本質があり、これを政府が税制上の優遇措置により後押ししているのですが、日本版ESOPからはこのようなビジョンが感じられません。

結局のところ、株価対策と買収防衛策の意味しかないように思います。

会計的には、設定された信託は連結対象になるのでしょうから、信託設定後に一括取得される株式は、連結財務諸表上自己株式として開示されるものと思われます。

【リンク】

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