排出量取引の会計処理

二酸化炭素(CO2)の国内排出量取引制度に参加する企業が増えている。政府が昨秋に試験的に始めた同制度にはこれまで715の企業・団体が参加を表明した。地球温暖化ガスの削減目標を達成するために、取引を活発化せざるを得ないみる企業は多く、会計処理方法や業績への影響に関心が集まっている。
(日本経済新聞2009年8月15日12面)

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排出量取引の会計処理については、「実務対応報告第15号 排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い」(最終改正平成21年6月23日)が企業会計基準委員会 から出されています。

これは、排出量取引、すなわち、自主的な行動計画として設定した数値目標将来何らかの義務が課された際の数値目標を達成するための補完的手段として、京都議定書で定められた京都メカニズムにおけるクレジット(「排出クレジット」又は「京都クレジット」)を獲得 し、これを排出量削減に充てることを想定した取引、第三者へ販売するために排出クレジットの獲得を図る取引に関する実務上の会計処理を示したものです。

クレジットという概念がわかりづらいですね。要するに、数値目標に達しない場合、数値目標をクリアしている他者からその余裕分を買ってきて、自らの削減実績に組み込むことができのですが、その場合に取引される排出量をクレジットと呼ぶのです。

実務対応報告第15号の概要は次の通りです。

「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い 」より

「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い 」より

他者から購入した場合、資産(自社使用目的の場合は無形固定資産、販売目的の場合は棚卸資産)に計上しますが、減価償却の対象にはなりません(但し無形固定資産に計上される場合は減損会計の対象になります。

記事に、「東京電力は前期までに349億円の排出枠を無形固定資産に計上。前期に償却し、全額を販管費として計上した。」とあります。

このニュースソースは、「2009年3月期決算Q&A」であると思いますが、そこに次の記載があります。

「Q:2010年3月期の炭素(排出)クレジットの計上額の見通し額を教えてください。

A:2009年3月期は、349億円を費用計上しました。これは、2008年3月期までの取得分78億円と2009年3月期の取得分271億円を全額費用化したものです。2010年3月期の見通しについては、取得量等も未定のことから、現時点ではお答えしかねます。」

「2009年3月期決算Q&A」

実務対応報告第15号によると、自社使用(償却目的による政府保有口座への排出クレジットの移転)時に費用計上される旨規定されており、この通りの処理がなされたものと思われます。

【リンク】

「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い 」企業会計基準委員会