賢い投資は節税から

金融商品を買って売るだけが資産運用ではない。運用の成果を高めるには、節税について考えることも大切だ。その手法は経済情勢や税制とともに変わってくる。今年は新しい証券税制の下で、株の損失を活用する動きが広がるかもしれない。厳しい運用環境の中で広がる、最新の節税事情を取材した。
(日経ヴェリタス2009年8月16日1面)

【CFOならこう読む】

「作家で税金に関する著作も多い橘玲氏によると、「正しい知識さえあれば、無リスクで手取りを増やせるのが節税」だ。最も確実で高利回りの資産運用とも言い換えられる。」
(前掲紙)

記事には全く触れられていませんが、最も税制上有利なのは、投資時に投資額が所得控除される金融商品です。これは単に拠出金額が所得控除されるというだけでなく、実質的にキャピタルゲインに対する税金が免除されることを意味します。この点マイロン・ショールズ他の「タックス・アンド・ビジネス・ストラテジー」(邦題「MBA税務工学入門」中央経済社)は、次のように説明しています。

「年金基金に拠出された$1は、n年後には$(1+R)nとなるが、年金支払時に、この投資収益累計額の全額に対して税率tで課税されるとした場合、税引後の手取り額は$(1+R)n(1-t)となる。年金基金に対する当初の投資額は($1)は、税効果(税引)後で考えた場合、(拠出時に投資支出額が全額損金算入されているために)$(1-t)で済むことから、税引後投資支出額に対する税引後投資収益率は、次のように計算される。
{1/(1 -t )}(1 +R )
n (1 -t ) = (1 +R ) n
但し、R=税引前運用利回り
n =期間
t=通常税率 」

橘玲氏の近刊「貧乏はお金持ち」(講談社)は、「一人会社」の有利性を説いた本ですが、その要諦は中小零細事業者になることにより小規模企業共済と国民年金基金に加入資格が生じ、これにより非課税で貯蓄できるところにあります。

「小規模企業共済は、個人事業主と中小企業役員のための退職金制度で、月額最高7万円(年額84万円)の掛け金全額を個人の所得から控除できる。積み立てた掛け金は中小機構(中小企業基盤整備機構)が所定の利率で運用し、役員の退職や会社の解散(廃業)の際に退職金として支払われる。

国民年金基金は、国民年金加入者の資産形成を援助する目的でつくられた公的年金で、月額最大6万8000円(年額81万6000円)の掛け金が同じく個人所得から控除される。国民年金基金の特徴は、国民年金や厚生年金などとは独立した個人別の勘定で管理され、運用されることだ。したがって、国民年金の支給額が将来減額されることになっても、国民年金基金の給付額は制度上なんの影響も受けない。」
(橘玲著「貧乏はお金持ち」講談社)

【リンク】

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