実質実効為替レート
15年ぶりの1ドル=83円台だけを見て「円高」と結論づけるのは早い。通貨の総合的価値を見る実質実効為替レートでは2005年より若干高い程度だ。この程度の円高で企業を一律に救済することは、経済の新陳代謝を阻害する。通貨安が進む韓国企業との競争への配慮など、対策の範囲を絞るべきだろう。
(日経ヴェリタス2010年9月5日45面 異見達見 土居丈朗教授)
【CFOならこう読む】
実質実効為替レートとは、
「ドルやユーロなど様々な通貨に対して存在する為替相場からみて、総合的に円の価値が高いのか、低いのかを判断するための指標となるレート」(前掲稿)
で日本銀行によって算出されています。
野口悠紀雄氏は、最近出版した著作「日本を破滅から救うための経済学」(ダイヤモンド社)の中で、次のように実質実効為替レートを勘案すると円はまだまだ安く、今後さらに円高が進む可能性を指摘しています。
「長期的に見れば、現在の実質実効為替レートはけっして円高とはいえない。日本国内の物価が下落しているために名目のレートが円高になっており、通常はそれを見ているために錯覚が生じているのだ。
(中略)
93年から95年頃のレートは、為替介入のない市場で形成された「自然なレート」だったと考えられる。その後に行われた政府の為替介入と円キャリー取引によって、為替市場が歪んでしまったのである。したがって、円が今後3割程度増価するのは、十分あり得ることだ」
CFOとしてはヘッジ方針をどう定めるか悩むところです。
【リンク】
日本を破滅から救うための経済学 | |
野口 悠紀雄
ダイヤモンド社 2010-07-29 おすすめ平均 |