税務巧者、税効果会計や低税率国を活用
民主党が参院選のマニフェストに法人税率の引き下げを盛り込み、企業の税負担が注目を集めている。日本の法人税率は40%超と、OECD諸国の平均26%超に比べて高いだけでなく、税負担を抑える意識が企業に希薄なことも問題視されている。
(日経ヴェリタス2010年7月11日14面)
【CFOならこう読む】
「1位のいすゞ自動車など、将来払いすぎた税金が戻ってくることを見越して会計上の税額が減っている企業が多い。実際の税額と会計上の税金認識のずれを調整する「税効果会計」の影響が大きくなっている。」(前掲紙)
税効果関係の注記に、法定実効税率と税効果適用後の法人税率との差異の内訳が示されており、これを見ると法人税率の高低の原因がわかります。
例えばいすずの場合は次の通りです(平成22年3月31日)。
法定実効税率 | 40.00% |
(調整) | |
評価性引当額等の増減等 | △58.2% |
在外子会社の税率差異 | △47.3% |
在外子会社の当年度損失 | 24.90% |
持分法による投資利益 | △14.4% |
外国源泉税 | 5.00% |
住民税均等割等 | 2.30% |
その他 | 2.00% |
税効果適用後の法人税率 | △45.7% |
評価性引当額の減少、つまり繰延税金資産の回収見込みの増大により繰延税金資産計上額が増加したことが主たる原因であり、恒常的な税務戦略によるものではありません。
「28位の日本電産はタイやフィリピンの海外子会社が税制優遇を受けている。優遇のある地域に意識的に進出する製造業は増えている」(前掲紙)
日本電産の注記は次の通りです(平成22年3月31日)。
法定税率 | 41.00% |
税率の増減要因 | |
海外子会社での適用税率の差異 | △23.2% |
未分配利益にかかる税効果の影響 | 3.30% |
評価性引当金 | 0.40% |
未認識税務ベネフィット | 3.40% |
特定子会社の留保金課税 | △0.1% |
その他 | △1.4% |
実効税率 | 23.40% |
日本電産の場合、その具体的な内容についても注記の中できちんと説明されています。
「当連結会計年度の実効税率は、前連結会計年度の実効税率よりも低くなりました。この主な要因は、評価性引当金の影響の減少、低法定税率の海外子会社での適用税率の差異の影響によるものであります。
海外子会社の税制上の優遇措置は、主にタイ、及びフィリピンの海外子会社に起因する所得に関係するものであります。
タイでは、NIDECは平成17年5月及び平成18年12月に免税の特権を得ました。これらの特権の下で、NIDECは5~7年の期間、法人税の免除を受けました。
フィリピンでは、NIDECは平成15年10月に4年間の「タックスホリデー」を含む税制上の優遇措置を受け、平成19年9月にそのタックスホリデーは2年間延長されました。さらに、平成21年と平成22年にそれぞれ1年延長されております。平成19年4月NIDECは新プロジェクトに対する他のタックスホリデーを4年間受け、さらに2年間延長されております。」
こちらは恒常的な税務戦略の結果と言えます。