FAS157 Q&A

米国の金融安定化をきっかけに、時価会計の停止論議が熱を帯びている。金融危機を引き起こしたサブプライムローンなどを組み込んだ複雑な証券化商品の市場が崩壊し、時価会計を基に金融機関に多額の評価損を迫る懸念が浮上しているためだ。しかし、時価会計の全面停止は世界の市場を混乱させかねない劇薬だ。とりあえずは柔軟な運用を可能にするにとどめ、金融機関自身に早期の体質強化を迫る、当局のメッセージと読み解く向きが多い。
(日経ヴェリタス 2008年10月5日 19面)

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ここ数日、米当局が、あたかも時価会計の停止を決めたかのような報道もありますが、それは事実と異なります。
9月30日に、SEC(米証券取引委員会)とFASB(財務会計基準審議会)が、FAS157号に関し次のようなQ&Aを公表しています。

Q 市場からの時価の証拠が存在しない場合、将来キャッシュフローなどを利用して会社側の想定に基づいて計算してもよいか?
A 使ってもよい。適切なリスクプレミアムを加えたキャッシュフローを用いた算定は許される。公正価値の決定は判断を必要とする。さまざまな原因からの複数の情報が公正な価値のより良い証拠を提供する可能性がある。予想キャッシュフローはほかの関連情報と同様と考えることができる。

Q 市場の混乱による、正常でない取引の価格は公正価値を測定する際の参考となるか?
A 正常でない取引は公正価値測定を決める際には決定的ではない。ただ取引が正常でないかどうかには判断が求められる。

Q 活発でない市場における取引は時価算定に影響を与えるか?
A 影響を与える。活発な市場における取引価格は、公正な価値を最も代表しているし、参考にされるべきだ。活発でない市場における取引は公正な値を測定するときの1つの情報かもしれないが決定的でない。活発でない市場での価格と、類似資産の価格が一致していないのならば、調整が必要かもしれない。
(日経ヴェリタス 2008年10月5日 19面)

んでおわかり頂けると思いますが、このQ&Aは、従来の基準の前提を大きく変えるものではありません。”時価会計が諸悪の根源”という意見に対し、157号の解釈の枠内でも大幅な損失計上が必要ない場合があることを再確認させる、というのがこのQ&Aの趣旨だと思われます。

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