発行済株式の3倍以上の大型増資、悪質な場合は上場廃止

大型増資は株主に説明を 東証、第三者割当の規制案

東京証券取引所が検討中の第三者割当増資に関する規制案が明らかになった。増資額が既存株数に比べて大きい場合には、既存の株主に納得してもらう措置をとるよう促す。発行済み株式の3倍以上の増資で、悪質な場合は上場廃止とすることも視野に入れる。

NIKKEI NET 2009年4月15日

【CFOならこう読む】

現時点では「上場制度整備懇談会」の規制案の内容は公表されていないので、よくわからない所が多いのですが、新聞記事によると、

・増資額が既存株数に比べて大きい(25%以上)場合には、既存の株主に納得してもらう措置をとるよう促す(「株主の納得性を高めるための措置」をとる)。
・発行済株式の3倍以上の増資で、悪質な場合は上場廃止とすることも視野に入れる

とのことです。

もともと原則的には、発行済株式の3倍を超える増資は会社法上出来ないのですが、株式併合を利用することにより、株式総数が大幅に増える増資が計画されるなどの事例が出ているため、東証としては何らかの措置を講ずる必要性を検討しているのです。

また、そこまでの規模の増資でなくても支配権の異動を伴うような増資を取締役会の決議のみで行うことができる現在の状況は、経営者が支配株主を選ぶということになりかねず、問題があるとの指摘が多いため、市場としてどのような措置を講ずるか検討されています。

「上場制度整備懇談会」の議事録を見ると次の記載があります。

(第三者割当に関する対応の方向性)
・ 上場適格性に疑義が生じるような第三者割当については、東証が審査を行うという方向性で良いのではないか。
・ 一定規模以上の第三者割当及び支配権の異動を伴う第三者割当については、緊急性が高い場合を除いて株主の納得性を高めるための手続きを求めるという方向性で良いのではないか。
(上場制度整備懇談会  第21回 議事要旨)

株主の納得性を増すための手続きとして求める経営陣から独立した者(外部有識者や社外取締役)から意見を求める、株主総会での意思確認(?)を行うことが想定されているようです。

ただし株式持合等により株主の大勢を経営者が選択できる状況を何とかしない限り、株主の意思を確認しても意味がないと思います。

懇談会のメンバーも同様の問題意識を持っているようで、議事録には次のような記載もあります。

・ 第三者割当に関しては、その他の条件が同じであるならば必然的に持分割合という点において希釈化が生じ、その点においては基本的に望ましいものではないと言えるのではないか。
・ 第三者割当は会社法上認められていることであるが、上場した以上、上場会社は資金調達を公募でやるということが原則という立場を打ち出しても良いのではないか。
・ 第三者割当に関しては様々な意見があるが、市場開設者としてある程度明確にその立場を明らかにしたほうが良いのではないか。
(上場制度整備懇談会 第22回 議事要旨)

この辺りが提案書にどのように盛り込まれるのか注目されます。

【リンク】

「上場制度整備懇談会 第21回 議事要旨」株式会社東京証券取引所[PDF]
「上場制度整備懇談会 第22回 議事要旨」株式会社東京証券取引所[PDF]