社債管理者

国内の公募普通社債の債務不履行が頻発している。不動産関連で発行企業の経営破綻が相次ぎ、2008年度は計6件に達した。「普通社債はデフォルトしない」という暗黙の了解が崩れた今、投資家保護の仕組みづくりを急ぐべきだとの声が多い。
(日本経済新聞2009年4月17日12面)

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今年1月、社債市場でTDK債の発行条件が注目を集めた。事業会社債では久しぶりに社債管理者を付ける可能性があると伝わったためだ。
社債の起債が自由化された1996年以降、社債投資家を保護する社債管理者に代わり、事務サービスのみ扱う分コストが安い財務代理人を置く手法が急速に普及した。
しかし、環境が一変したのを受けて、複数の機関投資家が設置を要求したとみられる。そのうちの一社は「財務代理人では(投資家の権利保護を求める)社債権者集会の開催が困難」と説明する。社債管理者であれば機動的に対応し、投資家の不利益を回避するよう会社に要求できる。
同様の動きはソニー債やパナソニック債でも見られた。今回はいずれも設置が見送られたが、社債投資家の権利保護を巡る議論に一石を投じたといえる。
(前掲紙)

社債管理者は、社債の発行会社の委託を受けて、社債権者のために、弁済の受領、債権の保全その他の社債の管理を行うものです(会社法702条)。ただし各社債の金額が1億円以上の場合、または社債権者の数が50人以上となる可能性がない場合には、社債管理者を置かなくてもよいとされています。

社債管理者には債権管理の能力が要求されるので、その資格は、銀行、信託会社または担信5条1項の免許を受けた者等に限られています(会社法703条)。

社債管理者の権限は次の通りです。

①償還・利息の弁済を受ける
②債権の実現を保全するために必要な一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を有する
③債権者の異議手続において、社債権者のために異議を述べることができる
④社債権者集会の決議により、当該社債の全部につき支払を猶予し、その債務不履行によって生じた責任を免除し、もしくは和解する
⑤①以外の訴訟行為、もしくは破産・再生・更生手続もしくは特別清算に関する手続きに属する行為をする権限を有する

2008年以前は2001年のマイカル債を含む2件のデフォルトがあっただけでした。

したがって社債管理者を不設置にしても特段問題なかった(もちろん法的要件はクリアした上で)のですが、昨夏以後6件、総額1250億円の社債がデフォルトし、環境が一変している、というのが今日の記事です。

2009年4月17日 日本経済新聞12面

2009年4月17日 日本経済新聞12面

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