東芝、公募増資を含む資本増強策発表

東芝は8日、3000億円強の公募増資を含む5000億円規模の資本増強策を正式に発表した。同日発表した2009年3月期の連結決算は、最終損益が 3435億円の赤字(前の期は1274億円の黒字)となり、自己資本は1年前の半分以下に減少。公的資金に頼らず28年ぶりの公募増資で財務を立て直すが、構造改革が遅れれば株価下落は避けられない。家電や半導体の不採算品目をスリム化し、原子力発電所など主力事業の強化を急ぐ必要がある。
NIKKEI NET2009年5月9日

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2009年3月期の連結最終損益が3,435億円の赤字となり、自己資本は4,473億円、自己資本比率は8.2%と大幅に低下しました。これを受けて28年ぶりとなる3,000億円強の公募増資を含む5,000億円規模の資本増強策を東芝は正式に発表しました。

資本増強策の具体的な内容は次の通りです。

新株式の発行及び株式の売出し
1.公募による新株式発行(一般募集)

一般募集の引受人の買取引受けの対象株式とし て普通株式 870,000,000株
一般募集のうち海外投資家に対する販売に関し て引受人に付与する追加的に発行する当社普通株式を買取る権利の対象株式の上限として普通株式 27,000,000株

2.株式の売出し(オーバーアロットメントによる売出し)

普通株式 103,000,000株

3.第三者割当による新株式発行

普通株式 103,000,000株
割当先:野村證券株式会社

利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付・適格機関投資家限定)の発行

1.社債総額: 1,700億円から1,800億円の範囲で、今後決定

2.償還価額: 各本社債の金額100円につき金100円

3.償還期限:2069年6月25日(払込期日後約60年後)

4.利率: 2014年6月25日以前の利払日においては、年7.5%から8.0% の範囲内で今後決定する固定利率(当該固定利率が適用される期 間(5年15日間)に対応する条件決定時における円スワップレートに対して条件決定時に決定するスプレッドを加えた利率) 2014年12月25日以降の利払日においては、6か月円ライボー(LIBOR)に対して、上記スプレッド及び1.00%のステップアッ プ金利を合計した利率を加えた変動利率

5.利払繰延条項

① 利払いの任意停止
会社の裁量により、本社債の利息の支払の全部又は一 部を繰り延べることができる(以下当該繰延べを「任意停止」、任意停止により繰り延べられた利息の未払金額を「任意停止金額」、任意停止がなければ当該利息が支払われるはずであった利払日を「任意停止利払日」という。)。

② 任意停止金額の支払についての努力
各任意停止利払日から5年以内に、当該任意停止利 払日における任意停止金額及びこれに対する利息を弁済するべく、本社債の要項に定める営利事業として実行可能な限りの合理的な努力を行うことを意図している。

③ 任意停止金額の強制支払
上記に拘わらず、本社債に実質的に劣後する当社株式 (当社普通株式を含む。)に対して剰余金の配当を行う場合
若しくはこれらの自社株式を取得する場合(ただし、法令に 基づき買い取る義務がある場合を除く。)又は剰余金の配当に関して最上位の優先株式若しくは本社債と実質的に 同順位の証券若しくは債務に関して剰余金の配当若しくは利息の支払がなされたときは、当社は、所定の期日に、任意停止金額及びこれに対する利息を弁済するべく、本社債の要
項に定める営利事業として実行可能な限りの合理的な努力を行う。

④ 任意停止金額の支払原資の制限
任意停止金額及びこれに対する利息を支払う場合は、当該支払を行う日までの6か月間に、普通株式又は格付機関から本社債と同等以上の資本性を有するとの承認を得た証券又は債務により調達した純手取金(ただし、本社債の要項に定められた限度とする。)により支払うものとし、これ以外の資金からは支払われない。

6.劣後条項:本社債の社債権者は、当社の清算手続、破産手続、会社更生手続 若しくは民事再生手続又は日本法によらないこれらに準ずる手続において、上位債務に劣後し、剰余金の配当を受ける権利に関 して最上位の優先株式(今後発行した場合)と実質的 に同順位となる範囲においてのみ権利を有する。

「増資が順調に進めば自己資本は7,600億円程度となり、自己資本比率は13%強と2ケタを回復する。劣後社債は自己資本には含まれないが、格付け会社はその半分を資本とみなすため、格付け維持の効果がある。」(前掲紙)。

公的資金に頼らず、公募増資により資本増強を行うという点について高く評価できます。

また年7.5%から8.0%の利払いを負担してでも、転換社債ではなく劣後社債により資金調達をしている点も透明性という観点から評価できます。

【リンク】

2009年5月8日「新株式発行及び株式売出し並びに利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債 (劣後特約付・適格機関投資家限定)発行による資金調達のお知らせ」株式会社 東芝[PDF]