公的資金注入適用の条件

事業再生に公的資金を注入する産業活力再生法の改正案が成立し、5月中にも適用が始まる見通しとなった。政府が民間企業の株主になるといる異例の制度だ。
その狙いは何か。どんな企業が対象となるか。政府の過剰介入の恐れはないのか。制度づくりを担当したキーマンの石黒憲彦経済産業省大臣官房審議官に聞いた。

(日経ヴェリタス2009年5月10日 18面)

【CFOならこう読む】

-パイオニア、エルピーダメモリなどが活用の意向を明らかにしています。どんな企業への注入を想定しているのですか。

適用を認めるための4つの要件を公表しました。これが想定先を素直に表しています。第1の要件は、金融危機の影響で一時的に資本が不足している企業。自己資本が痛み、銀行融資が受けられないような例です。構造要因で経営が悪化している企業は、あまり念頭にありません。これに関連する第2の要件として、危機がすぎれば経営がもとの状態に回復する企業でなくては、とも考えています。
政策としては(なぜ適用するのかを示す)数値も必要です。雇用に与える影響が分かりやすい指標になると判断し『従業員5,000人以上』などの基準を設けました。
これが3つ目の要件です。第4はメーンバンクを中心とする金融機関が支えてくれる
企業です。

対象企業の条件は次の通りです。

1.売上高が四半期20%か半期15%減。資本が25%減
2.企業価値向上に向けた事業計画の策定
3.国内従業員5,000人以上かそれらの企業への代替困難な部品供給3割以上
4.政策投資銀と民間銀の協調による出融資

黒田氏は(おそらく)エルピーダとパイオニアを想定して次のように話しています。

-どの程度の事業再編などを求めるのですが。

対象業界や案件によります。最も軽いケースは、かつての半導体のように需要が一時的に減って市場が悪くなっているけれど、サイクルが戻ればまた利益が出るという例。これなら当座の資金繰りに応えればいいわけです。

けれど電機メーカーのように過剰供給構造になっていて、身の丈に合ったリストラが必要な場合は、ある程度ドラスティックな計画がないと認められません。そうしないと(制度が想定している)3年後に出資したおカネが戻ってくる保証がないですから

パイオニアの場合に今必要なのは、事業再編ではなく企業再編だと思います。申請不受理がパイオニアを巡る企業再編の号砲となるのかも知れません。

【リンク】

なし