アデランスの委任状争奪戦本格化へ

米投資ファンドのスティール・パートナーズは11日、28日のアデランスホールディングスの株主総会で、会社側の役員案に反対すると発表した。これは国内投資ファンドのユニゾン・キャピタルが派遣する候補者を含む役員案。スティールはユニゾンによるアデランス株のTOBにも応じない意向だ。
(日本経済新聞2009年5月12日11面)

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スティールは昨日公表した文書の中で会社提案の取締役候補への反対と、TOBに応じない理由を次のように説明しています。

「アデランスの経営権取得のために相応のプレミアムを支払う代わりに、ユニゾンは1株当たり1,000円で35.2%を下限とする同社発行済み株式取得の提案をしていますが、これは、2009年2月28日時点の同社一株当たり純資産額である1,582円を大幅に下回っており、また2009年4月15日までの過去1年間の同社株価終値の平均を約25%下回っています。

スティール・パートナーズは、3名の社外取締役の反対にもかかわらずアデランスの取締役会が2009年4月16日にユニゾンの公開買付けへの支持を表明したことについて疑問を投げかけました。アデランスは、約200億円 または1株当たり約500円の現金および有価証券を保有する一方で、負債はほとんどないため、資金調達の必要はありません。
加えて、アデランス経営陣は、いままで既存の資本で当然上げるべき収益も上げることができていません。

スティール・パートナーズはメッセージの中で、「アデランス経営陣は不当な、既存株主の持分を希釈化させる強圧的なユニゾンの公開買付けを自らの地位保全を図るために提言しているのです。アデランス経営陣には、本来、かかる廉価での公開買付けを提言する合理的な業務上の理由などないはずです。」と指摘しています。

また、アデランスの取締役と経営陣が何年も続けて自らの業績予想を達成できておらず、アデランスの株主資本収益率(「ROE」)は過去2年連続してゼロ近く、あるいはマイナスにまで落ちており、今営業年度についてはわずか1%となることを予想していることも指摘しています。

スティール・パートナーズは、「アデランス経営陣は、いままで既存の資本で当然上げるべき収益も上げることができていません。また、彼らは事業計画を達成できず、M&Aも失敗に終わらせ、適正な資本配分を行うこともできませんでした。」と述べています。

スティール・パートナーズは、アデランスの全株主の権利と同社および同社従業員の利益のために、スティール・パートナーズが2009年3月25日に提案した高い資質を備える取締役候補者への支持を呼びかけています。アデランスに2004年以来投資している長期的株主であり同社発行済み株式数の26%超を保有するスティール・パートナーズは、推挙したこれらの候補者こそアデランスの業績と企業価値の改善を加速させるに必要とされる斬新な視点を同社にもたらしてくれるものと確信しています。

スティール・パートナーズが推挙する取締役候補者は、事業再生の豊富な経験を有する候補者、日本の一流企業の経営や事業運営に携わった豊富な知識と経験をアデランスにもたらしてくれる候補者です。 」

アデランスの株価はTOB価格1,000円にさや寄せしており、TOBが成功するか否かは微妙な情勢です。

そうすると、スティールが言うように、

「ユニゾンの公開買付けが成功しなかった場合に株主に残されるのは、株主の最大利益に資する形で事業を遂行してこなかった、従前の取締役会とその業務執行者です。
彼らによってアデランスの変革が行われるとは到底期待できません。」

というリスクを勘案すると、委任状争奪戦の焦点は、ユニゾンのTOB云々は関係なく、アデランスの現経営陣とスティールの推す経営陣のどちらを株主が支持するかに絞られたように思います。

【リンク】

2009年5月11日「スティール・パートナーズ・ジャパン、アデランス株主に対し平成21年定時株主総会において会社提案の取締役候補者への反対と、ユニゾンの公開買付け及び希釈化を生じさせる自己株式売却の拒否を要請」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピー [PDF]

2009年5月11日「アデランス定時株主総会:株主価値・企業価値を守るために 」スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド(オフショア)、エル・ピー [PDF]