保有有価証券の強制評価減

「減損会計」と呼ばれるルールの適用を巡って、監査法人と金融界が火花を散らしている。同ルールは企業が保有する株式や不動産の価値が大幅に下がった場合に、損失計上を求める内容。金融・経済危機で株価などが急落したこともあり、金融界は同ルールの要件緩和を求めたが、監査法人は首をたてに振らない。両者は2010年3月期決算を次のヤマ場と位置づけ、攻防を続ける構え。
(日本経済新聞2009年5月14日 4面)

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ナンピン買いとは、保有有価証券の時価が下落したときに、取得単価を引き下げるために、低い時価で同じ銘柄の有価証券を買い増すことを言います。

例えば、@10,000円で10株保有する株式の時価が@4,000まで下落したとき、その時価で10株取得すると、取得単価は、

(@10,000円×10株+@4,000円×10株)÷(10株+10株)=@7,000円

となります。

これを減損逃れの手法として利用されることがあります。政策的投資のために保有している上場会社の株式が50%以上下落すると、評価損を計上しなければなりません(上の例では、@10,000円×10株−@4,000円×10株=60,000円評価損を計上する必要があります)。

それをナンピン買いすることで、取得単価は@7,000円、時価は@4,000円なので、時価は取得価格の50%以上下落していないので、強制評価減は不要とのロジックが成立するのです。

新日本監査法人は二月、有価証券の減損処理に関する監査方針を金融機関などに示した。「以前から保有していた銘柄を低い価格で追加取得した場合、『取得原価』は追加取得によって引き下げられた価格ではなく、追加取得前の従来の価格となる」(前掲紙)

私はこの新日本監査法人の対応は基本的に正しいと思います。

減損とか強制評価減というのは、基本的に取得原価主義の考え方を採用している会計が、簿価と時価に一定以上の乖離が見られた場合、簿価を時価に置き換えることを要求するものです。そのとき、問題なのは単価ではなく、取得価額であるはずです。

上の例では100,000を40,000円に引き下げると考えるべきなので、100,000円を40,000円に引き下げたうえで、新たに@4,000円×10株=40,000円の追加取得を行ったと考えるのです。

そうすると、簿価は40,000円+40,000円=80,000円。単価は80,000円÷20株=4,000円となります。

この辺のところは実務指針にしっかり書かれるべきだと私は思います。

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