M&Aにおける商標権の重要性-ローソン・am/pmのケース

ローソンによるエーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm)買収の最終交渉が長期化している。コンビニエンスストア「am/pm」の商標権を保有する米社が売却条件として約1100店のうち数百店の店名を残すように求めたことに、ローソンが難色を示しているため。来春にも予定していた統合が数カ月ずれ込む公算が大きく、ローソンの成長戦略にズレが生じる可能性もある。
NIKKEI NET2009年5月16日

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新聞記事によると、ローソンは今年2月にam/pmの親会社であるレックス・ホールディングスからam/pmの全株式を今年3月末までに買収することで合意していました。

その際am/pmの商標権を持つ英石油大手BP傘下の米エーエム・ピーエム・インターナショナルの了解を得ることが条件となっていたのですが、米社側は売却条件として1,100店のうち数百店についてはam/pmの店名を残すことをもとめてきています。

これに対し、ローソンは首都圏の一部でam/pmの店名を継続して使用することを決めているものの、将来、ローソンに店名変更するオプションを放棄することはできないと、義務付けには拒否の姿勢を示しています。

「米社が数百店の店名存続を求めたのは、日本でのライセンス収入を維持するため」(前掲紙)というのは正しい見方だと思いますが、それ以外に企業ブランドへのこだわりも米側にあるのではないかと思われます。

企業ブランドと言えば、6月号の文藝春秋に大前研一氏が「今こそ盛田昭夫を再評価せよ」という論稿の中で、盛田さんのソニーブランドへのこだわりを象徴する事件として、「ソニーチョコレート事件」について書いています。

「ソニーチョコレート事件とは、ある菓子メーカーがロゴもそっくりにして「ソニーチョコレート」なる菓子を販売したことを受け、ソニー側が不正競争防止法と商法の商号・商標使用禁止の仮処分を裁判所に申請したという出来事である。当時はまだ知的財産の概念が普及していなかったが、裁判はソニー側の勝利で終わった。盛田さんは後に『MADE IN JAPAN』で「商標というものは企業の生命であって、万難を排して守るべきものだ、と私は常日頃考えて来た。商標や社名は単なる場当たり的な思い付きではなく、責任を背負い、製品の品質を保証しているのである。他人がこつこつと築き上げてきた信用や評判にただ乗りしようとするのは、盗み以外の何物でもない」と記している。」

M&Aは、「企業の生命」たる商標を売り買いする局面であり、特に第三者が商標を所有している場合のM&Aは一筋縄には行かない、ということを我々は改めて胸に刻みつけておく必要があると思います。

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