アーバンコーポ問題その後
資本市場の番人である証券取引等監視委員会。世界的な金融危機のなか、監視の目はどこに向かうか。佐藤賢一委員長が語った。
(日経ヴェリタス2009年5月17日16面)
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本件については、昨年9月12日、本年1月8日、1月9日及び2月3日に取り上げています。以下事件の概要を再掲します。
「7月11日 2010年満期 総額300億円のCBをバリバ向けに発行転換価格 344円(開示日6月26日の終値)
資金使途 財務基盤の安定性確保に向けた短期借入金を始めとする債務の返済に使用する予定
出来高加重平均株価の算定の基礎となる株価に一定の下限を設定」
「実際の調達額は91億円。この契約(スワップ契約)はアーバンコーポが破綻するまで開示されず、300億円の資金を調達できたとみていた一般投資家を含む幅広い市場参加者を欺く行為として批判された。」
(日本経済新聞2009年1月8日4面)
破綻まで存在が隠されていたスワップ契約の概要
7 月11日 BNP パリバに300 億円を支払う
パリバは手元にあるCBを株式に転換したうえで、市場の売買高の12~18%に相当する株数を市場で売却。
”売却した株数×その日の市場の売買高加重平均株価の90%”に相当する金額を日々アーバンコーポレイションに支払う。
CBとスワップ契約を一体のものとしてみると、MSCBとほぼ同じものになるにも関わらず、この片側のみしか開示しなかったことが東証の適時開示規則に違反している点が特に問題となりました。
金融庁はBNPパリバに対し業務改善命令を発動したものの、課徴金は科していません。
「監視委が、市場関係者から信頼されるには法執行への公平感、共感が問題となる。経営破綻したアーバンコーポレイション問題。同社は資金調達を巡る有価証券報告書の虚偽記載で課徴金の納付命令を受けた。一方、この調達に関係するスワップ内容を開示しないようアーバンに対し強く要請したBNPパリバ証券会社東京支店への処分は業務改善命令にとどまり、処分の差に疑問が出ている。
「これまで、資金調達と密接に関係はしていても当事者間の相対の開示はしなくてもいいという議論がありました。
そうした状況で、『偽計』だとして、不意打ち処分することは好ましくありません。アーバンに対する課徴金処分で何を開示すべきか明瞭になり、今後はそうした(働きかけ)行為が『偽計』という違法行為に該当することが明らかになりました。
今後は偽計でやる(処分する)ということです。監視しやすい状況をつくることがまず必要ですね」
佐藤氏の説明は、理解はできますが、共感はとてもできません。
これに対し、日本証券業協会は厳格な処分を行う方針を明確にしていますが、いまだ処分したの報道が耳に入ってきません。
限りなく黒に近くてもグレーならやる、という一部外資系投資銀行の体質を改めさせるためにも、早急に厳格な処分を行うことが求められます。
【過去記事】
2008年9月12日「アーバンコーポレイション バリバとの密約」