ライツイシュー手続期間短縮へ

東京証券取引所は、株主を対象とした新たな増資手法であるライツイシューを使いやすくする。現在、2~3ヵ月かかる手続き期間を信託銀行などの協力を得て公募増資と同じ約1ヵ月に短縮、機動的に資金調達できるようにする。この手法を使えば大型増資をしても元からの株主の権利や持分が薄まらず、受け入れられやすいとみている。
(日本経済新聞2012年9月12日1面)

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「株主割当増資は、株主に新株を買う権利(新株予約権)が無償で割り当てられる。お金を払って予約権を行使すると増資後も従来の持分は維持できる。一方、市場で投資家を募る公募増資では新たな株主が加わるため元からの株主の持分が薄まる」(前掲紙)

本来希薄化が生じるかどうかは、増資が時価で行われる限り、調達した資金が価値を創造する投資に向けられるかどうかで決まります。ライツイシューで資金調達したところで、その資金が無駄に使われるなら、株主価値は毀損します。

このことを簡単な数値例で説明してみましょう。

株主が4人、発行済株式数は4万株、株価が@1万円の会社があります(株主価値は4億円)。ここで1億円の増資を行います。

第三者割当増資(株価@1万円、発行株式数1万株)により増資したなら、投資直後の株主価値は4億円+1億円=5億円ですから、株価は5億円÷(4万株+1万株)=@1万円となり、希薄化は生じません。

しかし、この1億円の増資が無駄に使われ露と消えるのであれば、その場合の株主価値は、5億円-1億円=4億円、株価は4億円÷(4万株+1万株)=@0.8万円となり希薄化が生じます。

一方、株主割当増資(株価@1万円、発行株式数1万株)で調達したなら、株価は株価は5億円÷(4万株+1万株)=@1万円となり、やはり希薄化は生じません。

この1億円の増資が無駄に使われてしまえばば、その場合の株主価値は、5億円-1億円=4億円、株価は4億円÷(4万株+1万株)=@0.8万円となり同じように希薄化が生じます。

つまり、希薄化が生じるかどうかは、増資の手法によって決まるのではなく、調達した資金がいかに有効に使われるかによって決まるのです。この点は企業財務を理解する上で極めて重要です。

第三者割当増資が、経営者の保身のため、経営者自らが株主を選択するために行われることがありますが、株主割当増資によることが原則になれば、このようなことが行われなくなる、という点にライツイシューの意義があります。

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