社債の減損

家電ショック」に社債市場が揺れている。業績不振を背景にシャープ債の価格がこの半年で半値以下に下落。パナソニック債も先週の業績大幅下方修正をきっかけに価格が急落している。有力企業の社債の異変に市場にはリスク回避のムードが広がっており、低格付け債の発行にブレーキがかかりかねない状況だ。
(日本経済新聞2012年11月7日15面)

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「多くの投資家は7~9月の”苦い経験”を引きずっており、早めにパナソニック債を売ろうとする動きが出た。苦い経験とはシャープ債だ。6月末には額面と同水準の100円近辺で取引されていたが、業績や財務内容の悪化に関する報道が出るにつれ価格は急落。9月初旬には40円台と半値以下となり、4~9月期決算で減損処理を迫られる機関投資家が多くなるとみられる。」(前掲紙)

売買目的以外の有価証券のうち時価のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理しなければならない(金融商品会計基準第20項)。

このうち、「時価が著しく下落した」と「回復する見込みがあると認められる場合」について、金融商品会計に関する実務指針第91項は、次のようなガイダンスを提供しています。

「個々の銘柄の有価証券の時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合には「著しく下落した」ときに該当する。」

「債券の場合は、単に一般市場金利の大幅な上昇によって時価が著しく下落 した場合であっても、いずれ時価の下落が解消すると見込まれるときは、回復する可能 性があるものと認められるが、格付けの著しい低下があった場合や、債券の発行会社が 債務超過や連続して赤字決算の状態にある場合など、信用リスクの増大に起因して時価 が著しく下落した場合には、通常は回復する見込みがあるとは認められない。」

シャープ債は、時価が半値以下となっており、また信用リスクの増大に起因して時価が著しく下落したと認められることから、多くの機関投資家が減損処理を迫られることになる、というのが今日のニュースです。

但し、四半期財務諸表においては、継続適用を要件に、「四半期切放し法」と「四半期洗替え法」のいずれかの方法を選択適用することができることに留意が必要です(四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針第4項)。

なお、減損処理を行った債券については、取得差額はもはや金利調整差額とは考えられないので、以後、償却原価法の適用はありません(金融商品会計に関するQ&A)。

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