CDSの評価損?

主要銀行8グループの09年4~6月期連結決算が31日出そろった。債券売買益の大幅増に加え、今春以降の株価回復で保有株の損失処理が減り、みずほフィナンシャルグループ(FG)を除く7グループが最終(当期)黒字を確保した。ただ、8グループ合算の最終利益は前年同期比35・8%減の2312億円と利益水準は低い。
毎日.jp 2009年8月1日

【CFOならこう読む】

「CDSとは融資先企業の倒産に備えた一種の保険で、買い手が一定の保険料を支払う代わりに、対象企業が倒産した場合には売り手が元本を保証する仕組み。金融危機が深まる前には米国の大手投資銀行や保険会社が売り手となり、多くの金融機関などがCDSで購入。大手邦銀も主に貸し倒れに備える保険目的でCDSを買っていた。

邦銀の貸出金のうちCDSで手当てされている分は、実際に企業が倒産して回収不能になってもCDSの売り手が保証してくれることになっている。このため基本的に損失にはつながらない。

やっかいなのは、CDSの価値が企業の倒産確率によって大きく変動する点だ。対象企業が倒産する恐れが高まれば価値は上がり、倒産確率が低下すれば価値は逆に下がる。
保有するCDSの価値が変動した場合には、銀行は会計上のルールで評価損の計上を迫られる。金融危機を境に、このルールの適用は世界的に厳しくなった。」

CDSの買い手は、信用リスクをヘッジする目的でCDSを購入するわけです。ヘッジ対象である債権の評価がCDSと同様に金融工学的に行われるなら、CDSとヘッジ対象がともに時価評価されるので、CDSの評価益と債権の評価損が相殺されることになるのですが、債権の評価損はデフォルト時にいっきに認識される場合が多いため、CDSを時価評価しても
ヘッジの効果が財務諸表に適切に反映されるとは限りません。

つまり、コトが起こらなければ、CDSの価値はいずれゼロになるのです。

CDSの評価損というと大きな問題であるかのように聞こえますが、保険料であると考えれば、いずれにしても費用化されるべきものなのです。

デリバティブの会計基準は、時にヘッジすること自体が悪いことであるかのような誤解を財務諸表に与える場合があるので、留意する必要があります。

もちろんリスク管理の巧拙はきちんと評価されなければならないのは当然です。