投資顧問会社 総会で反対・棄権39%

年金基金などから資産運用を請け負う投資顧問会社が今年の株主総会シーズンで、会社側提案の議案に対し、反対したり棄権したりした割合が投資先企業の 39%に達した。2008年(40%)とほぼ同水準だった。議案ごとにみると、新株予約権発行や退職慰労金支給で反対・棄権比率が高かった。
(日本経済新聞 2009年8月13日 7面)

【CFOならこう読む】

「日本証券業協会が一任契約で国内株を運用する投資顧問会社76社を対象に、今年5~6月の株主総会での議決権行使状況を調査した。投資顧問会社1社あたり平均で387社に議決権を行使し、このうち150社で反対・棄権票を投じた」(前掲紙)

「会社提出議案に対して反対・棄権した会社数の割合は、39%(1社あたりの平均企業数387社に対し150社)と前回調査の40%(同352企 業に対し139社)とほぼ同水準だった。反対・棄権をした議案件数の割合も、10%(1社あたりの平均総議案件数3,333件に対し328件)と前回調査 の11%(同2,646件に対し300件)とほぼ同水準だった。

反対・棄権した比率の高かった議案は、新株予約権発行議案で24.0%、退職慰労金支給議案が21.7%であった。その他会社提案も20.1%と反対の比 率が高いが、ここには買収防衛策に対する反対・棄権が入っているものと推測される。 」(日本投資顧問業協会ウェブサイトより)

「投資一任契約に係る議決権等行使指図に関するアンケート集計表」より

「投資一任契約に係る議決権等行使指図に関するアンケート集計表」より

新株予約権とはストックオプションのことではなく、買収防衛策としてのライツプランのことを言っているようです。

「反対・棄権した議案項目を投資一任会員数(回答会員数57社)で見ると、取締役選任関係議案が46社(81%)、その他会社提案45社(79%)、定款 一部変更関係及び退職慰労金支給議案が各43社(75%)、監査役選任議案係議案が42社(74%)となっている。また、新株予約権発行議案については、 信託型ライツプランに5社、事前警告型ライツプランに21社が反対している。また、定款一部変更関係議案やその他会社提案議案についても、買収防衛策の導 入と判断される議案であったとの理由から反対したとの回答が多く、買収防衛策について株主価値減少を懸念していることが推測される。

取締役選任議案、監査 役選任議案を候補者毎に別議案として検討したかという項目では、取締役を候補者毎に別議案としている会員が35社(56%)、監査役を候補者毎に別議案としている会員が34社(54%)であった。ま た、取締役・監査役選任議案における再任について、取締役会への出席状況を判断材料にするとの会員が増加する傾向にあることから、取締役選任議案、監査役 選任議案を精査するにあたり、それぞれ個人毎に判断しようとしていることがうかがわれる。」
(日本投資顧問業協会ウェブサイトより)

監査役選任議案への反対・棄権が比率が大きいことが目につきます。監査役が日本企業のコーポレートガバナンスの要諦であるとの意識が投資家側にも根付き始めているのでしょう。

会社側への要望としては、①買収防衛策に関する監査役の見解、②社外取締役、社外監査役の取締役会や監査役会への出席率、③ストックオプション発行による潜在的な希薄化率など、株主による議案精査の一助となる情報記載の充実を求める声が多かったというこです。

【リンク】

社団法人 日本証券投資顧問協会